肝疾患診療連携パス運用の開始とご協力のお願い

東京医科大学茨城医療センター 消化器内科 科長 池上 正

クリニカルパス(Clinical Path)とは?

病気ごとに、治療や検査、看護ケアなどの内容およびタイムスケジュールを一覧表に表したものを「クリニカルパス」または「クリティカルパス」と呼びます。クリニカルパスは、患者さん用と医療スタッフ用があり、ともに医療機関ごとに医師や看護師をはじめ各医療専門分野の医療スタッフが検討して作成しています。わが国でも1995年頃に導入され始め、徐々に普及してきました。

患者さん用のクリニカルパスは、主に入院中に受ける検査、手術、処置、手術後のリハビリ、食事、入浴などの標準的な内容と予定が、イラストつきでわかりやすく示されており、入院が決まった段階か入院当日に渡されることが一般的です。医療スタッフ用のクリニカルパスは、科学的な根拠に基づいた専門的かつ詳細な内容が書き込まれており、複数の医療スタッフが情報を共有することでスムースな連携を図り、チーム医療の推進に役立てられています。クリニカルパスの活用により、安全で質の高い医療の提供、医療従事者間の連携によるチーム医療の実践、業務の効率化と医療資源の節約などのメリットが得られます。当科では検査、治療を必要として入院される患者さんのうち、定型的なスケジュールで施行が可能なものに関してクリニカルパスを作成し、実際に運用しています。上部消化管の内視鏡的粘膜切除術(ESD)、下部消化管のポリペクトミー、粘膜切除術(EMR)、経皮的エコー下肝生検、ラジオ波凝固療法(RFA)、経カテーテル的動脈塞栓術 (TACE)、慢性肝炎に対するインターフェロン導入などのクリニカルパスがあります。

地域医療連携クリニカルパスとは?

地域医療連携パスは、クリニカルパスの運用をひとつの医療機関だけでなく、地域医療圏までに拡大したもので、これを用いることで、医療機関の役割分担を明確化し、長期間の持続的なフォローアップが可能になります。多くの病院で、脳卒中や大腿骨頸部骨折などの救急疾患についての連携パスが作成され、実際に利用されています。当院では、これを長期間にわたり継続して診療の必要な肝疾患の適切な診療のために重要なプログラムと位置づけ、普及を進めようとしています。

肝疾患診療連携パスのねらい

当センターのある茨城県は、肝疾患診療を扱う専門医の数が少なく、また地域的に偏在している傾向があります。従って多くの肝疾患の患者さんを非専門医の先生方に診察していただいているのが現状です。一方で、患者さんの中にはウイルス性肝炎に必要な状態でも治療が受けられなかったり、肝がんが発生しやすい状況なのにきちんと画像検査を定期的に受けておられない方がいます。治療が必要な患者さんをできるだけ多く専門医に紹介していただき、可能な部分はかかりつけ医の先生と分担しながら、必要な検査、治療を多くの方にうけてもらおうというのが連携パスのねらいです。

この連携パスを利用することで、患者さんにとっては、@病院と診療所で行う医療行為の分担が明らかになる、A検査、治療の内容が標準化する、B通院時間、外来での待ち時間が短縮できる、というメリットがあります。また、かかりつけ医の先生にとっては、@病院と診療所の役割分担が明確になる、A専門医との間で治療経過、検査データの情報交換ができる、B病態変化時の対応(とくに救急対応、入院)ができる、などのメリットがあります。また病院にとっては、@病院と診療所の役割分担が明確になる、A紹介率の増加、B外来診療の負担を減少できる、というメリットが考えられます。現在当院ではいくつかの診療所との間で試験運用を開始し、地元医師会の先生がたと協議会を定期的に開催しながら、徐々にこの試みを広げていこうとしています。

実際の運用にあたって

対象症例

以下の疾患を対象としています。

  1. ウイルス性肝疾患(B型肝炎、C型肝炎)
  2. 脂肪性肝疾患 (NASH/NAFLD)
  3. 肝硬変
  4. 肝疾患で診断のつかない症例
紹介基準

以下のような症例は、当院にご紹介ください。なお、その際に、肝疾患連携パスの使用をご指定ください。

  1. ウイルス肝炎検査で陽性(検診例も含めます)
  2. 肝機能検査でALT 31 IU/L以上
  3. 血液検査(血小板数15万未満)
  4. 肝腫瘍を認める

上記のうちあてはまるものがあれば、以下の方法に沿って東京医大茨城医療センターへご紹介ください。

紹介基準に該当する患者様を肝疾患連携パスでご紹介いただく場合は、当院指定の診察依頼書(別紙)の紹介目的に、「肝疾患連携パス」とご記入の上、Faxまたはお電話にて当院地域医療連携室にご連絡をお願いいたします。ご依頼いただいた内容にもとづき、担当医と調整のうえ、日時を決定し、予約通知書をFax通信させていただきます。

肝疾患診断連携パスの説明をして、必要書類を患者様にお渡しください。この際の原本(医療者用ー様式1-1)はかかりつけ医の先生で保管をお願いします。当院には、そのコピーを紹介状とともに封書のうえ患者様に受診の際にご持参していただくようお願いします。また、肝疾患診断連携パス(患者用ー様式1-2)は、患者様にお渡しいただき、当院受診の際にご持参していただくよう説明をお願いします。

結果(報告書)に基づき、かかりつけ医の先生から患者様へご説明をお願いいたします。インターフェロンを含む抗ウイルス療法の適応と診断しました患者様につきましては、報告書とともに別紙Fax用紙を送付いたしますので、ご記入のうえ、地域医療連携室にFax通信をお願いします。その他の病態で、医療連携パスでの運用が可能な患者様に関しては、指定した疾患パス(慢性肝炎、肝硬変、脂肪性肝疾患パス)に基づいての病診連携を開始させていただきます。

  1. 肝疾患地域連携パスへのご案内(PDFファイル 8.2MB)
  2. 肝疾患地域連携パスの内容について(PDFファイル 2.71MB)
  3. 紹介状(情報提供書)(Excelファイル 159KB)
  4. 案内図(患者様用)(PDFファイル 52.2KB)
慢性C型肝炎3剤併用療法病診連携パス