腎癌

腎臓にできる充実性(水の貯まった嚢胞性でないもの)腫瘍の90%は悪性腫瘍である腎細胞癌と言われています。腎癌の25%は発見された時から転移のある進行性腎癌であり、転移のない場合も20〜30%に将来転移が出現すると言われています。腎癌は放射線や抗がん剤が効きにくいことから早期発見による手術的治療が原則であると言われています。腎癌も組織型によってガンとしての悪性度が様々であると言われています。最も頻度が多いのは淡明細胞型ですが、乳頭状腺癌、嫌色素細胞型と呼ばれるものはやや悪性度が低く、一方髄質由来のもの、肉腫様の部分を含む腫瘍は悪性度が高いと言われています。

治療

当院では4cm以下の早期癌は腎部分切除或いは腹腔鏡を用いた低侵襲手術を行っております。当院の腎癌手術の件数は年間10例ほどです。転移がある場合でも転移が一つであれば原発巣と転移巣を共に切除する場合があります。また新しい分子標的剤を用いた治療や栄養血管を塞栓して腫瘍を壊死させる治療(塞栓術)や、インターフェロンα、インターロイキン2といった薬剤を用いた免疫治療を行っています。新宿の本院ではより進歩した免疫治療である樹状細胞療法を行っています。

膀胱癌

痛みを伴わない肉眼的血尿があった場合、膀胱癌の疑いがあります。膀胱癌は尿路上皮(移行上皮)由来の癌が多く、時に扁平上皮や腺上皮由来の場合があります。発癌のリスクはベンジンなどの有機物質による職業性のものもありますが、最も一般的なリスクは喫煙と言われています。

治療

膀胱癌は早期であれば内視鏡手術のみで完治できますが、組織の悪性度が高かったり、発見された時に進行していた場合膀胱全体を摘出する場合があります。また内視鏡手術で治療可能であっても、また膀胱内に再発する確率が高く、特に切除して2年以内は再発率が高いため、十分な経過観察が必要です。当院では外来における内視鏡検査は全て軟性鏡を用いており、より疼痛の少ない検査を心がけております。最新型の細径内視鏡も使用しております。膀胱を摘出する手術を行う場合、前立腺や尿道に浸潤がなければ腹部に尿を出すストマを設けず、いままで通り尿道から排尿できる自然排尿型の人工膀胱造設術を行います。膀胱全摘を行った場合や、進行癌の場合には抗がん剤による化学療法を入院により行います。当院の膀胱癌内視鏡手術は年間約60例で膀胱全摘手術は5-7例です。

前立腺癌

米国では男性のガン死因の第2位を占める頻度の多い癌で日本でも増加しています。健康診断で血液検査の前立腺特異抗原(PSA)を検査するようになり、早期前立腺癌の発見率が飛躍的に上昇しました。確定診断は組織検査により行われ、当院では1泊2日の入院で行っております。前立腺癌は一般的に他の癌よりも進行がゆっくりであり、前立腺に限局した早期癌が見つかった場合、転移が出現するのは平均5から10年後、命に関わるのは10から15年後と言われ、かなり先の健康状態やライフスタイルを見越した治療選択がなされます。また悪性度が低く、癌がごく僅かの場合治療をせずにPSAなどの検査を時々行うのみで様子をみる(watchful waiting, active surveillance)場合もあります。当院の前立腺生検は年間約100件です。

治療

前立腺に限局した早期癌の場合は、前立腺に対する局所治療が原則です。局所治療には手術(前立腺全摘術)、放射線治療(外照射、小線源治療)、超音波治療(HIFU)などがあります。当院では手術、外照射、超音波治療のうちから最も患者さんの状態と希望に適する治療を選択して行っています。当院の前立腺全摘手術は年間約20件で、超音波治療は年間4〜5件、放射線治療はIMRTの発展型であるVMATを用いて年間60件ほどそれぞれ行っています。これらの治療の特徴について以下の表にまとめます。

限局性前立腺がんに対する各種治療法の比較
治療方法 方法 長所 短所
手術
前立腺全摘出術
下腹部を切開して前立腺、精嚢を摘出します。 もっとも広く行われ方法も確立している 入院期間が3週間。排尿困難や失禁がおこることがある。勃起障害になる。
放射線治療
(外照射・VMAT)
40回くらいに分けて放射線を前立腺に当てる 外来通院でも可能。週5回7-8週間。 膀胱炎、直腸炎など放射線障害が後年起こり、しかも難治性である。
重粒子線治療 加速器を用いた大掛かりな設備で元素を前立腺に当てる。 従来の放射線よりも効率がよい。周辺臓器への障害が従来の放射線治療に比較すると少ない 関東では千葉県稲城。300万円以上かかる。1.5ヶ月入院。ホルモン療法は継続。
小線源療法
(内照射)
Brachytherapy
放射線を出す線源を60-100本ほど前立腺に打ち込む 出血は殆どない。入院期間も数日と短め。 治療後種々の制限がある。違和感がでることがある。
HIFU
(ハイフ)
超音波で前立腺を高温に加熱する。 入院は3-4日で、体の負担も少ない。 後遺症として尿道狭窄が半数近くおこる。追加治療を要することがある。

他の臓器(リンパ節や骨など)に転移が見られる前立腺癌に対しては、前立腺癌が男性ホルモンによって増殖が刺激される事から、抗男性ホルモン療法を行います。これは薬を用いて男性ホルモンを去勢された状態まで低くし、癌細胞に対しても局所で男性ホルモンが作用するのをブロックするものです。ホルモン療法の欠点は血栓症や肝機能障害が出現する可能性があること、ホルモンが効かない癌が後年出現してくる場合があることです。また疼痛軽減の目的で放射線治療を行ったり、ホルモンが効かない癌に対して抗がん剤の化学療法を行う場合もあります。放射線治療はVMATを利用した外照射だけでなくストロンチウム89を利用した内照射も行っています。化学療法は新規抗がん剤であるカバジタキセルをふくめ全ての薬剤に対応し、治療にあたっています。

精巣癌

20歳代から40歳位までの若い男性に起こる癌で最も多いものの一つで、2〜3ヶ月の間に痛みを伴わずに精巣(睾丸)が大きくなってきたら精巣癌を疑います。治療は第一に精巣摘出術を行うことで、組織型を確認することで以降の治療の要否、経過の善し悪しが変わってきます。最も多い精上皮腫(セミノーマ)という型の癌は万一リンパ腺等に転移をしていても化学療法や放射線治療が効果的です。しかし絨毛癌などの悪性度が強い型の組織を含んでいた場合は難治性の場合があります。

治療

まず精巣摘出術を行います。組織型と画像診断による病期の進行度により、放射線治療、抗がん剤による化学療法を追加して行う場合があります。化学療法を強力に行う必要がある時には、白血病などの治療でも用いる本人の末梢血幹細胞を用いた自己幹細胞輸血を化学療法後に行うことがあります。当院での治療数は年間1〜2例ですが、末梢血幹細胞輸血療法を除く標準治療は全て行っています。

腎盂・尿管癌

腎で作られた尿が集められる部位(腎盂)、膀胱に運ぶ管(尿管)にできる癌が腎盂・尿管癌です。多くの場合その組織構成から尿路上皮癌ですが、扁平上皮癌や腺癌ができることもあります。癌の悪性度は膀胱癌と同様ですが、内視鏡手術が困難であること、組織の壁が膀胱よりも薄く、臓器外へ浸潤・転移しやすいことから適切な外科的治療が必要になります。

治療

基本は腫瘍がある側の腎・尿管そして膀胱への出口である尿管口周囲を合併説除する手術です。従来腎と膀胱近傍の2ヶ所に皮膚切開をおいて手術を行う事が多かったのですが、近年の腹腔鏡手術の発達から腎は腹腔鏡手術で摘出し、膀胱部の切開から腎と尿管及び尿管口周囲の膀胱を切除する術式を行う施設が増えています。当院では従来の皮膚切開による手術を行っておりますが、体型や腫瘍の部位により腹腔鏡による腎摘出も行います。当院での治療数は年間8-10例です。手術後は場合により放射線治療や抗がん剤の化学療法を追加します。