齋藤 誠

呼吸器外科 教授
齋藤 誠

最も多いがん死

日本人は年間約100万人の人が亡くなります。わが国の3大死因は、がん、心疾患、脳血管疾患ですが、そのうち最も多いのががん死で、全死因の3分の1を占め、平成18年の統計で33万人ががんで亡くなりました(2007.11対がん協会報)。がん死で最も多いのが肺がんで、男性のがん死の1位、女性のがん死の3位で年間6.3万人が亡くなっています。

原因はタバコやアスベスト

喫煙は、肺がんや喉頭、食道、膀胱などのがんとの関連が示されています。また肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患COPD、狭心症、心筋梗塞など心疾患との関連も示されています。喫煙率は最近減少傾向ですが、男性の46%、女性の18%が喫煙しており欧米と比べてまだ高いといわれます。喫煙のほか、アスベストも要注意です。アスベストは断熱材として道路や建物、船舶の外壁に広く使われており、2006年のクボタ報道で胸膜のがんである中皮腫が注目されました。アスベストは中皮腫のほか肺がんの原因にもなるといわれています。

肺がんの種類と特徴

肺がんは、気管支がどんどん枝分かれしていって最後は肺胞になるまでの間のどの部位にもできますが、大まかにいって太い気管支にできる中心型肺がんと、肺胞に近い部位におこる末梢型肺がんがあります。中心型肺がんは、心臓に隠れているため胸部レントゲンで見つかりにくく、血痰などの為に喀痰細胞診で見つかることがあり、肺炎などの症状があることがあります。末梢型肺がんは、無症状のことが多く、胸部レントゲンや胸部CTで発見されることが多いという特徴があります。また、肺がんは組織型別に、多い順に腺がん、扁平上皮がん、小細胞がん、大細胞がんと主に4種類あり、主に単一の組織型からなる他のがんと大きく異なります。中心型肺がんは、扁平上皮癌、小細胞がんが多く、末梢型肺がんは、腺がん、扁平上皮癌、大細胞がんが多いと言われています。

ほとんどは無症状

中心型肺がんは、咳、痰、特に血痰が重要で、肺炎などの症状を伴うことがありますが、末梢型肺がんは無症状のことが多いといわれます。どちらも進行すれば胸痛、声のかすれ、瞳孔の異常、手や顔のむくみなど隣接する胸壁、神経、心血管の圧迫症状が出現します。肺がんは肺、脳、骨などに転移し易く、頭痛、めまい、手足の麻痺や痛みなどがみられます。

診断は病理組織検査で

肺がんの診断は病理組織検査で確定診断されます。少なくとも細胞診断、できれば生検材料が必要です。レントゲンやCT、血液検査だけで肺がんの診断はできません。最も簡単な診断法は喀痰細胞診で中心型肺がんには有効な検査法です。通常は気管支鏡やCTガイド下肺生検などの生検材料から診断されます。手術可能な例では、手術室で胸腔鏡を用いた肺切除(VATS)を行い、迅速病理組織検査でもし肺がんだったら根治手術に切り替えて、診断と根治術を同時に行う方法が多くなってきました。

治療

肺がんはI期からIV期までの病期にわかれ、II期までのものは手術がベストな治療法です。手術は肺葉切除とリンパ節郭清が基本です。最近では胸腔鏡の併用により開胸の大きさはずいぶん小さくなってきました。中心型の早期がんではレーザー治療が行われることがあります。

III期以上の肺がんは抗がん剤を用いた化学療法が中心的治療となります。また局所に放射線療法を行うことがあります。最初に化学療法を行い、がんを小さくしてから手術を行うこともあります。進行がんではいろんな治療を組み合わせた集学的治療が基本です。末期は疼痛コントロールなどの緩和ケアが中心となります。この様に肺がんの治療は様々な領域の専門家が集まって一人の患者をみるチーム医療が特に重要です。

図1 中心型肺がん
気管支鏡で見た右主気管支の扁平上皮癌。周囲に出血している。
図2 末梢型肺がん
左上葉の腺がん。ヘビースモーカーでタバコが原因の肺のう胞が見える。
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