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大腸・直腸がんの早期発見と予防

消化器内科
齋藤 吉史

早期発見のために

初期の段階では、大腸・直腸がんはほとんど無症状です。このため大腸・直腸がんの早期発見のためには、第一に検査を受けることです。大腸がん検診では、検便による便潜血検査(糞便に血液が混入しているがどうか)が広く行われています。便潜血が陽性であった場合、精密検査として肛門からの大腸ファイバー(カメラ)で調べることになります。
 

2008年、当科において250人の便潜血陽性者に対して大腸ファイバーを行いました。グラフに示しますように、この内がんが見つかった人は9人(3.6%)でした(他施設の報告を見ても2~4%ですので平均的と考えます)。このように、便潜血が陽性であってもがんである確率は低いのですが、大腸ファイバーをやってみないとはっきりしたことは言えないのが実情です。
2008年、当科において41人の大腸・直腸がん患者さんが新規に発見されました。当科受診のきっかけは、「検診で便潜血陽性といわれたため」、が9人(22.0%)と最も多く、次いで「血便に気付いた」7人(17.1%)、「腸閉塞で緊急入院」4人(9.8%)、「貧血の原因を調べるよう言われた」4人(9.8%)、「腹痛が続く」4人(9.8%)、「便秘が続く」1人(2.4%)でした。このことからも、便潜血検査が重要であることがわかっていただけると思います。

2008年当科における便潜血陽性者内訳

予防のために

大腸・直腸がんの約8割 はポリープから発生するといわれています(最短で5年、普通は20年ぐらいかかるといわれています)。つまりポリープを切除することは、がん予防のために大変重要と考えられます。大腸ポリープは5mm以下で1%、6~10mmで8.8%に癌化がみられていたという報告があります。このため、6mm以上のポリープは可能な限り、大腸ファイバーを使って切除していくことが望ましいと考えられております。前述のように、2008年当科の便潜血陽性者(グラフ)中、がんの割合は少ないですが、ポリープは114人(45.6%)と高確率で発見されています。このことからも、検診と大腸ファイバー検査が、がん予防にも重要であることがわかっていただけると思います。
ところで、「50歳以上で大腸ファイバー検査を行って異常が無かった人は、5年後に1cm以上のポリープのある確率が1.3%であった。」という研究報告があります。つまり大腸ファイバー検査を受けて異常なしといわれたら、5年間はあまり心配しなくていいですということですので、大腸・直腸がんが心配だという方は、症状が無くとも是非一度検査を受けてみて下さい。
大腸・直腸がん発生率と日常生活について、最近の研究では、肥満とアルコールが危険因子であることが確認されています。食物繊維は極端に摂取不足でなければ関係ないとされています。また、軽度の便秘(週2~3回程度の排便)もがんの発生率と無関係とされています。

大腸ポリープ内視鏡治療の実際

1.切除前
いびつな形をしています
2.切除中
平べったいポリープなので、粘膜に水を注入して浮かせます
3.切除後
きれいにとれました

内視鏡治療

すでにがん化してしまった、12mmの大腸ポリープの大腸ファイバーによる切除の様子の写真です(図)。1泊の入院で、出血や穿孔などの合併症もなく取り除くことができました。これ以上大きかったり、粘膜内に深く入り込んでいたりすると内科での治療は不可能となり、外科で手術をお願いすることになります。
 

まとめ

大腸・直腸がんの早期発見と予防のため1)50歳過ぎたら大腸がん検診や大腸ファイバーをなるべく受けてください(ポリープの段階で治療しましょう)。2)アルコールは少量にとどめてください。3)メタボリック症候群といわれた方は、ダイエットを頑張って下さい。