大腸がんの治療最前線

消化器外科 講師
渡辺 善徳
消化器外科 助教
島崎 二郎

大腸がんの治療は、早期発見から手術が最良です。しかし、進行がんや再発が見つかっても簡単にあきらめないことです。肝臓がんや肺がんなどと比べると、かなり治りやすく、6割以上の患者さんが治るか、あるいは大腸がんと共存して長期に生存できると考えられています。大腸がんの治療の骨子は、手術と化学療法の2つです。

 

手術が基本

大腸内視鏡による、ごく初期のポリープがんの切除や、早期がんの粘膜切除も手術の仲間です。内視鏡治療ができない早期がんの一部と進行がんは、周囲のリンパ節とがんを含む腸管を切除する手術になります。通常の開腹手術、小開腹、腹腔鏡と手術の方法は色々あるように思えますが、手術の基本内容は何十年も変わっていません。おなかのキズの大きさの違いこそあれ、その内容はどれも同じです。患者さんの状態によって、どんな手術になるかが決定されます。肥満や開腹手術を受けたことのある場合や直腸がんの場合は通常開腹、それ以外は、進行の程度にもよりますが、小開腹や腹腔鏡で行うのが当院の基本方針です。

切開の大きさの比較

左から 腹腔鏡、小開腹、通常開腹の大きさ

心臓や肺に余病のある方は、腹圧のかかる腹腔鏡は困難なので、小開腹が適します。術後の予定は通常は同一で、翌日から氷片、2日目から飲水、4日目から流動食摂取、7日目以降退院可が一般的です。肝臓や肺への転移は、多発していても切除可能であれば切除した方が、治る確率は高くなります。

化学療法は外来で

手術後5年を過ぎると、治ったと判断されますが、治らなかった方の8割は手術後2年半以内に再発しています。そのため手術後2年半を如何に乗り切るかが大切です。進行がんの手術が成功した場合、大腸がん治療ガイドラインでは、抗がん剤の飲み薬を半年間服用することを推奨しています。しかし、期間が短すぎるのではないかと言う意見も多く、手術時にリンパ節転移があった場合は、相談の上で内服期間を延長する場合があります。
手術してもがんが残った場合や再発した場合の平均生存期間(半数の人が生存できる期間)は8ヶ月ですが、化学療法を行うことで、3倍以上延長されます。分子標的薬を始めとする新しい抗がん剤が続々と出現しているおかげです。

肝転移後の抗がん剤の効果

当院では、内服薬と静脈注射薬を合わせて10種類前後の化学療法を用います。効果や副作用を見ながら全て使いきって、2年以上の生存期間を目指しています。これらの中で、毛が抜ける治療法は3つだけです。2日間、持続注射が必要な治療もありますが、ポケットサイズの持続注入ポンプを持ち帰るため、全ての化学療法は外来で行います。これらの目的は、がんを消失させるのではなく、進行を抑えて共存の状態を長く続けることですので、消失しないからと言ってあせってはいけません。がんと共存しながら5年以上元気な方もいらっしゃいます。