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見つけにくく治りにくい婦人科領域のがんー「卵巣がん」(後編)

産科・婦人科 教授
藤村 正樹

卵巣がんが怖いこと、最近は増えてきている事は解ったけど、どうすれば早く見つけられるの?

卵巣は骨盤の中にある臓器ですので、少し腫れてもすぐには飛び出して来ず、症状としては現れません。そのため、卵巣に出来た腫瘍が大きくなり、骨盤の中に収まりきらなくなり、ぽこんと骨盤の中から飛び出してきた時に初めてお腹が膨らんできたことに気づかれる方が多いのです。実はこの段階ではかなり進行してしまっている事が多いのも事実で、そのために卵巣がんの治療成績が悪いといっても過言ではありません。
 

それでは、どうすれば卵巣がんを早く見つけられるのでしょうか。よく「毎年子宮がん検診を受けているから私は安心」とおっしゃる方がおられます。しかし、子宮がん検診では内診と子宮頸部の細胞検査(細胞診)だけが行われている事が多いのが現状です。お腹の脂肪が多くなる中年以降(=卵巣がん好発年齢)の患者さんの場合には、婦人科医が内診をしても骨盤内の様子があまり良く解らない事が多く、内診だけでは初期の卵巣がんを見落としてしまう可能性があります。

経腟超音波断層法

このような場合、内診と同時に、腟から骨盤の中の状況を確認できる経腟超音波断層法を併用すれば、子宮筋腫の有無・場所・大きさ等や卵巣が腫れていないかどうかを高い精度で確認する事が出来ます(図2)。症状がない今こそ、経腟超音波断層法を毎年の恒例の検査としてお受けになられる事が大切ではないかと思われます。当科(茨城医療センター産科婦人科)の外来では、受診された患者さんの診察時には必ず経腟超音波断層法を施行しておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせ下さい。

図2

経腟超音波断層法 子宮(正常)
経腟超音波断層法 両側卵巣(正常)

最後に

定期的に検診を受けられる事によって、がんを早く見つける事はいろいろながんに共通した大事な事ですが、もう一つ忘れてはいけない事があります。それは、それぞれの病気(がん)がどんな病気であるかを患者さんに良く知って頂く事だと思います。それぞれのがんがいったいどんな性格を持っているのか、見つけ易いのか見つけにくいのか、いったい何が原因でどんな風にがんに進展してくるのか、治療法はどんな治療法があるのか、ある程度興味を持って頂き、知って頂く事が早期発見・治療の秘訣ではないかと考えています。
今回の稿では、卵巣がんの一つの側面を皆さんにお伝えしましたが、その他にも沢山のお伝えしたい情報(現在の診断方法や治療法の現状など)があります。いろいろな機会を利用して、そういった情報を引き続きお伝えしてゆきたいと思います。