放射線治療
最新システム「高精度放射線治療装置」が稼働
最高の放射線治療を提供する
「放射線」は、目に見えず、匂いもせず、体にあたっても痛みや熱を感じません。ところが、体の表面や奥にある「がん」を治療することができます。
放射線治療は、痛みを伴わないので麻酔もいらず、大きな傷跡を残す事もない体に優しい治療です。
今まで当院で築いてきた臨床経験と最新の高精度放射線治療システムを融合し、自信を持って高度ながん治療を提供します。“最高の放射線治療”で地域医療に貢献致します。
最新技術のIMRTが短時間に
複雑な治療プログラムでも、わずか3分以内で正確に照射できる最新IMRT機能(VMAT)を搭載しております。
脊髄や直腸など当てたくない部位を避けて照射する事により、副作用を大幅に減らす事ができます。
最新のIGRT機能を搭載
高精度放射線治療では、毎回正確に放射線を当てる事が必要です。しかし、当てたい場所は、体の中にあります。そこで、毎回の位置ずれを治療装置でCTやX線撮影をし、画像解析後短時間に補正します。
画期的な呼吸性移動対策
放射線治療の永遠のテーマである呼吸性移動のある肺がんや肝臓がん治療においては、毎回照射する前に、4次元CT解析を行い呼吸性移動を考慮した位置補正を行います。また、今後腫瘍の動きに合わせた呼吸同期照射も可能となります。
毎回呼吸移動をしても照射する位置(赤丸)に入っているか動画で確認する事が出来る。
がんの最新放射線治療のお話
「放射線」は、目に見えず、匂いもせず、体にあたっても痛みや熱を感じません。ところが、体の表面や奥にあるがんを治療することができます。
放射線治療は、手術療法、抗癌剤治療と並んで癌治療の三本柱の一つとなっています。それは癌病巣に放射線を当ててがんを死滅させる、あるいは癌が増殖する能力を奪うという治療法です。放射線にはいくつか種類がありますが、当院ではレントゲン検査でも使われているX線を用います。この治療法はレントゲン博士がX線を発見した翌年より始められたという記録が残っており、120年近い歴史のある治療法です。
放射線治療というと一般の方には怖い印象があるものと思いますが、腫瘍の診断や治療の機械が進歩した結果、効果が高く副作用の少ない放射線治療の方法が開発され、20年前とは別の治療のようになってきております。20年以上前、特にコバルトと呼ばれる機械が使われていた頃には、機械の性能不足から癌病巣に対する線量よりも周辺の正常組織の線量の方が多くなってしまう場合や不正確な照射になる場合があって不十分な結果になる事がありました。しかし、現在の放射線治療は、1)リニアックという医療専用に開発された直線加速器で体の深部まで十分に届くX線を発生させて用い、2)CTを撮影してCT画像を元に、放射線治療専門医が治療の範囲や治療法を適切に決め、3)コンピューターで制御された高精度装置を使って、訓練を積んだ診療放射線技師が正確に照射を行います。最新の放射線治療は、体の負担が殆どなく、内科的な合併症を持った方でも実施できる体に優しい治療です。
近年の放射線治療で最も大きな進歩は、定位放射線治療とIMRT(強度変調照射)が開発された事です。定位放射線治療は、いわゆるピンポイント治療のことです。開発当初は、脳の小さな病変だけが対象でした。三次元的に様々な方向から放射線を照射して腫瘍には高線量を投与して、周囲の正常組織にかかる放射線の量を最低限に抑えようという方法で、目に見えて優れた効果が得られました。この治療法の成功は脳だけでなく、肺とか肝臓の腫瘍などの体幹部の腫瘍にも応用されるようになって、対象となる腫瘍は大きさが3cm以下のものに限られるものの広く有効性が認められております。当院でも2000年より定位放射線治療を積極的に行っておりました(図1)。
IMRT(強度変調照射)は、従来のX線による放射線治療の限界を解決できる先進的な照射技術です。今までの照射では、照射野内の放射線強度は均一ですが、IMRTでは放射線治療装置の照射ヘッドに内蔵されている多段絞りを精密に操作することで放射線の強度の変化を作り出します。IMRTでは腫瘍及び当てたくない重要臓器の位置に合わせて、コンピューター制御でビームの強さを調整し、多方向から正確に照射します。この結果、正常組織の影響を最小限に保ちつつ、同時に腫瘍に対しては高線量照射が可能になります。図2は、前立腺癌に対する5 方向からの強度変調ビームと線量分布図を示します。腫瘍には十分な線量が照射される一方、従来副作用を起こし易いとされていた直腸の線量が低減できます。初期のIMRTは、照射にかかる時間が長く、20分程度の照射時間が必要でしたが、複雑な照射を、わずか3分以内で正確に照射可能な最新IMRT機能(VMAT)が、開発されており、当院で5月から稼働する最新放射線治療装置にもVMATを搭載しております。
これに加えて、放射線を正確に腫瘍に当てるための治療技術も開発されております。最新の放射線治療装置には、CTスキャンが内蔵されており、治療装置の治療寝台に寝たままでCTを撮影でき、狙ったところに腫瘍があるかどうかを確認できます(図3)。もし、わずかでもずれがあれば、画像解析後、0.1mm単位でボタン1つで位置を補正する機能が搭載されています。また、放射線治療は短くても30秒以上かかるため、呼吸を止めて治療する事が難しく、肺がんや肝臓がん治療においては、呼吸による移動が問題でした。呼吸性移動に対しては、息を吐いている時だけ照射を行う呼吸同調照射や短時間で放射線照射ができる特殊なモード(FFFモード)を用いて10秒程度の息止めで照射する方法が開発されており、海外を中心に臨床応用されつつあります。当院で5月から稼働する最新放射線治療装置は、今後、呼吸同調照射やFFFモードへの対応を予定しており、可能になり次第、実施して参ります。
最新機器による放射線治療
当院では、最新システム高精度放射線治療装置 ELEKTA Axesseを導入し、本年5月に日本で初めて稼動します(写真1)。この放射線治療装置は、高度なコンピューター制御を搭載しており、超高精度のピンポイント照射がより正確にできます。
新しく搭載された主たる機能は、以下の3点です。
1)最新技術のIMRT(強度変調照射)が短時間に(詳しくは、がんの最新放射線治療の項も参照ください)
狙ったところに高線量を照射しながら、当てたくないところの線量を低減できる理想的な放射線治療がIMRT(強度変調照射)です。そのIMRTを更に一歩進めたVMAT(回転IMRT)機能を搭載しており、精緻なコンピューター制御で複雑な照射をわずか3分以内で正確に実施します。
2)最新のIGRT(画像誘導放射線治療)機能を搭載し、位置ずれのない正確な照射
放射線治療は正確に腫瘍に向かって放射線を当てる事が必要です。しかし、当てたい場所は、体の中にあるので、これまでの放射線治療装置では、簡単には確認できませんでした。本装置には、CTスキャン、X線撮影装置、画像解析装置が内蔵されており、毎回の位置ずれを治療装置でCTやX線撮影をし、画像解析後短時間にずれを補正して正確に照射します。
3)画期的な呼吸性移動対策
放射線治療の永遠のテーマである呼吸性移動のある肺がんや肝臓がん治療においては、毎回照射する前に4次元CT解析を行い、呼吸性移動を考慮した位置補正を行います。また、今後、腫瘍の動きに合わせた呼吸同期照射も可能となります。
これらの高度な機能は、自費診療や先進医療のような高額な自己負担を必要とするものでなく、保険診療にて広く地域の患者様に提供でき、経済的にも患者様に優しい治療となっております。
以上の点以外にも、患者様のアメニティを考慮した照射室などの安心で安全な高精度放射線治療を提供するための工夫が随所に盛り込まれております(写真2)。今まで当院で築いてきた臨床経験と最新の高精度放射線治療システムを融合して自信を持って高度ながん治療を提供すると共に地域医療に貢献致します。