指定にあたって

肝疾患診療連携拠点病院の指定にあたって

消化器内科 教授
池上 正

東京医科大学茨城医療センターは茨城県の推薦に基づき、厚生労働省の設置許可をへて、平成20年5月1日付で、茨城県より肝疾患診療連携拠点病院に指定されました。本拠点病院整備に関しては、平成19年1月に出された全国C型肝炎対策医療懇談会報告書による、「都道府県における肝炎検査後肝疾患診療体制に関するガイドライン」により端を発しました。肝疾患に係る地域の医療水準の向上を図る観点から、肝疾患診療体制の確保と診療の質の向上を図る目的での国家事業です。
 

検診などで発見された肝炎患者さんを適切に医療に結びつけることは大変重要なことであります。しかし、正確な病態の把握や治療方針の決定には、肝炎に関する専門的な医療機関の関与が今や不可欠です。さらに肝炎診療においては、かかりつけ医と専門医療機関との連携は必須です。それぞれの役割に応じた診療体制の構築をすることが今や重要な課題となっています。各都道府県において良質かつ適切な医療を受けられるようにするためには、地域の医療機関における肝炎を中心とする肝疾患診療の向上、均てん化を図る必要があります。そのために各都道府県に肝疾患診療連携拠点病院を原則1カ所選定し、当該病院を拠点として他の専門医療機関と連携しながら診療体制を構築することが決定されました。
茨城県は9医療圏があります。上記の如くの診療体制を県内で構築するためには、南北に長い本県においては1カ所ではきめ細かな連携を取りにくいという観点より2カ所の指定となりました。県南、県西、鹿行地区を中心に、東京医科大学茨城医療センターが肝疾患診療連携拠点病院として指定され、県央、県北地区を中心として、日立製作所日立総合病院が拠点病院となることにきまりました。

拠点病院の機能役割については次のとおりです。
 

1.肝疾患に関する専門医療機関の条件を満たしていること、

    1. 専門的な知識を持つ医師(日本肝臓学会が認定する肝臓専門医)による診断と治療方針の決定が行われていること
    2. インターフェロンなどの抗ウイルス療法を適切に実施できること
    3. 肝がんの高危険群の同定と早期発見を適切に実施できること

2.肝疾患に関する以下の機能を有すること

    1. 医療情報の提供
    2. 都道府県内の専門医療機関等に関する情報の収集や提供
    3. 医療従事者や地域住民を対象とした研修会・講演会の開催、相談支援
    4. 専門医療機関との協議の場の設定

3.肝がんに対する集学的治療が実施可能な体制であること

4.都道府県の中で肝疾患の診療ネットワークの中心的な役割を果たすこと

5.肝疾患相談支援センターを設置すること

 

 

当院においては、1、3については教育機関として当然の事項であり、1の診療体制が一番整備としては重要課題であります。肝臓の専門的医療体制については大学病院という性格上、指導医1名、専門医5名と県内で最も多くの人材を有しております。本年1月より、当院ではいち早く薬害肝炎等に関する専門相談外来も開設しました。日本肝臓学会指導医・専門医が担当し、薬害肝炎等に関して心配がある患者様、県民の皆様の相談をすでに行っております。このことも今後拠点病院としては重要な仕事であります。

 

本院は稲敷医師会、及び近隣医師会との連携は密であり、紹介、逆紹介を通して積極的に患者さんの交流を行っております。さらに地域医療医機関・住民に対し、公開講座も頻回に開催し啓発活動を積極的に行っております。大学病院としての高度な診断、医療技術の提供、医療機関間の情報交換、患者さんの長期的な追跡と医療の改善、より良い福祉の提供を進めているところであります。また、土浦市医師会、つくば市医師会、稲敷医師会、石岡市医師会、牛久市・竜ヶ崎市医師会、さらに真壁医師会までの県南、県西の6医師会の連携による県南・県西肝疾患研究会を通し、慢性肝疾患に対する中核病院、医師会の先生との連携、ネットワーク構築を本院が中心となりすでに行っています。

 

以上のように東京医科大学茨城医療センターは肝疾患診療連携拠点病院として認定される土台をここ数年で構築してきたことが、今回茨城県の推薦を得、国からの指定許可、県からの認可に至ったものと考えております。

 

昨年指定された地域がん診療連携拠点病院としてがん診療、さらに今回指定された肝疾患診療連携拠点病院として肝疾患診療を軸とし、生活習慣病診療などの重点化も図り、市民の利益を第一に考えた質の高い保健・医療・福祉サービスを実現することを目指し、科学の進歩、研究の成果、保健・医療・福祉資源を統合化し、個人や地方自治体へ還元することを本病院として目指して行こうと考えております。職員一同気持ちも新たに、地域医療の充実を目指そうとしているところであります。