内視鏡部
特色
センター長
- 岩本 淳一
- 専門:経鼻内視鏡、内視鏡治療、カプセル内視鏡、炎症性腸疾患(IBD)
看護スタッフ
当内視鏡センターのスタッフは、内視鏡技師3名・看護師2名の5名で検査治療時の対応をしております。
検査台数は、上部消化管内視鏡2台・気管支内視鏡1台・下部消化管内視鏡2台の合計の5台で稼動しており、内科(消化器)、外科(消化器)、内科(呼吸器)、呼吸器外科における内視鏡検査治療に携わっております。
当院では2004年11月より、経鼻内視鏡(鼻から入れるカメラ)検査が導入されました。これは従来の経口内視鏡(口から飲むカメラ)では、咽頭反射により吐き気を増強させるため。苦痛を伴う患者様が多く見受けられていました。しかし、鼻から胃カメラを挿入することにより、検査中は吐き気もなく会話も可能であることから、医師とのコミュニケーションも可能なため、患者様の苦痛の軽減に大きく関与しております。
内視鏡センターでは、患者様が快適に安心して、内視鏡検査を受けられるよう安全対策を常に考慮しながら、スタッフ一同日々努力しております。疑問や質問などありましたらどうぞお気軽に内視鏡スタッフにお声賭け下さい。お待ちしております。
消化器部門
診療内容
内視鏡センターでは、内科(消化器)、外科(消化器)の医師により年間で上部消化管内視鏡検査を約2,500件、下部消化管内視鏡検査を約1,500件、胆道系検査を約230件行っています。消化器癌においては早期発見・早期治療を心がけており、検査法としては経鼻内視鏡、治療法としては切開剥離法の導入などを積極的に行っております。また、これまで十分な検査ができなかった小腸病変に関してもカプセル内視鏡やダブルバルーン小腸内視鏡を導入し積極的な検査を行っております。
当院にて施行している内視鏡検査・治療の一部をご紹介します。
小腸内視鏡検査
- これまで小腸は未知の消化管といわれ詳細な観察のできない部分でした。しかしカプセル内視鏡、ダブルバルーン小腸内視鏡の登場で、小腸にはこれまで考えられていたより以上に多彩な病変があることがわかってきました。ここではカプセル内視鏡とダブルバルーン小腸内視鏡について、比較も交え簡単にご説明します。
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適応の比較
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適応(カプセル内視鏡)
- 原因不明の消化管出血
(胃内視鏡や大腸内視鏡で原因不明の消化管出血では小腸の検査としてカプセル内視鏡を行います)
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適応(ダブルバルーン小腸内視鏡)
- 出血
- 小腸狭窄
- 小腸腫瘍
- Crohn病
- 膵・胆道疾患(胃切後のERCPなど)
- 異物除去
- 腸閉塞の原因検索
- 腸重積
- 大腸内視鏡挿入困難例
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カプセル内視鏡との比較
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カプセル内視鏡
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- 苦痛がない
- 自動撮影
- 解像度が低い
- 観察のみ
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ダブルバルーン小腸内視鏡
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- 鎮静が必要
- 自由に撮影
- 解像度が高い
- 生検・治療ができる
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実際の画像
このように大変詳細な観察が可能です。
経鼻内視鏡検査
今まで内視鏡検査を受けたくてもためらっていた患者様に対して「楽な内視鏡検査」を受けていただくため、私どもの施設では県南地区では初めて、フジノン東芝ESシステムが開発した極細径タイプの上部消化管用スコープを導入いたしました。
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経鼻内視鏡の 適応症例
- 健診などのスクリーニング検査
- 咽頭反射(嘔吐感)が強い患者様
- 開口障害がある患者様
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経鼻内視鏡の 否適応症例
- 精密な観察、検査・治療手技が予想される患者様
- 強い疼痛(鼻腔)を訴える患者様
- 高度の鼻腔狭窄・変形がある患者様
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極細径スコープでの胃・内視鏡検査のメリット
- スコープが舌の根元(舌根)に触れることで、咽頭反射(嘔吐感)が起こります。鼻からの挿入でこの問題が解消しました。
- スコープはFTS社製で、従来の半分の5.9mmの細さです。更に、鼻に適したしなやかさでむりなく、スムーズな挿入ができます。
- 鼻への麻酔も微量で、身体への負担が軽減されます。
- 患者さんは、モニターに映し出される自分の胃の映像を見ながら、医師にその場で質問ができます。
- 患者さんは検査中にしゃべれるため、安全な検査につながります。
現在、経鼻内視鏡は、上部消化管のスクリーニング検査や、安定した病態の経過観察おいて有効な手段と考えられています。今後はスコープや処置具の進歩により、治療内視鏡においても安全で有効な手段となっていくことでしょう。今後も、私どもは経鼻内視鏡をはじめ、地域住民の皆様に、安全で最新の医療を提供していきたいと考えております。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
早期胃癌の治療法として、従来より内視鏡的粘膜切除術(EMR)が広く行われています。早期胃癌と一言に申しましても、すべての症例が内視鏡的に切除できる訳では有りません。そこで、2001年には日本胃癌学会の「胃癌治療ガイドライン」においてその適応が提示されました。基本的には、リンパ節転移が無く、一括切除ができることが条件となっています。具体的な条件のなかに、腫瘍の大きさが2cm以内とありますが、これは従来より行われているEMRという方法では一括切除できる大きさが2cmが限度であることによるようです。一括切除できなければ術後の再発率が高くなってしまい、2cm以下という項目ができたものと思われますが、転移が無いだけならば実際もっと大きな病変もあることが解っています。そこで近年開発された、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が注目されています。この方法では2cm以上の大きな病変でも一括切除することが可能であり、今まで外科的に胃を全摘していたような病変に対しても内視鏡的に切除できるようになりました。当科におきましてもH16年2月より導入し、現在まで約140例に施行し、良い結果を残しております。
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ESD施行例
- A. 不整な粘膜を認め、ESD施行可能な早期胃癌と診断しました。
B. ESDにて病変を切除しました。
C. 約35mmの切除標本です。一括切除出来ています。
D. 約2ヶ月で瘢痕化し、治癒しました
現在、経鼻内視鏡は、上部消化管のスクリーニング検査や、安定した病態の経過観察おいて有効な手段と考えられています。今後はスコープや処置具の進歩により、治療内視鏡においても安全で有効な手段となっていくことでしょう。今後も、私どもは経鼻内視鏡をはじめ、地域住民の皆様に、安全で最新の医療を提供していきたいと考えております。
呼吸器部門
診療内容
気管支鏡検査を受けられる方は、呼吸器センターで医師が検査を予約しますので、まず呼吸器センターを受診してください。気管支鏡は気管支肺領域の疾患の診断治療を目的として施行されます。呼吸器センターでは、年間約250件の気管支視鏡検査の実績があります。肺癌に関しましては、早期発見を心がけており、喀痰細胞診にて少しでも肺癌の疑いのある細胞が出た方や血痰が出た方には積極的に気管支鏡を施行しております。中心型早期肺癌の症例には外科的切除を施行せず、東京医大で開発された最新の低侵襲治療である内視鏡的な光線力学的治療(Photodynamic Therapy: PDT)を施行しております。また、当院では、軟性気管支鏡(flexible bronchoscope)はもちろんのことですが、硬性気管支鏡(rigid bronchoscope)による診断治療も積極的に施行しております。
検査を受ける前の注意点
- 気管支鏡検査を受けられる方は、検査直前のお食事は絶食になります(例えば、午前中の検査であれば朝食抜き、午後の検査であれば昼食抜き)。
- 心臓のお薬などで血液を固まりづらくする薬(バイアスピリン、バファリン、ワーファリンなど)を内服されている方は、検査前に休薬期間が必要となりますので医師にご連絡ください。
- 義歯のある方は、検査前に外してください。
気管支鏡の麻酔
- 噴霧した麻酔薬キシロカインを吸入していただき、咽喉頭、気管気管支の局所麻酔を行いますので、歯医者などの麻酔でショックを起こしたことのある方は注意が必要です。
- 検査終了後も麻酔の影響が残りますので、検査後2時間は飲水や食事ができません。
気管支鏡検査内容
- 気管支擦過細胞診断
- ブラシにて病巣を擦過し細胞を採取します。
- 気管支鏡下生検
- 鉗子にて病巣を採取します。
- 気管支肺洗浄
- 生理食塩水を気管支から肺胞内に注入し、注入液とともに細胞を回収し検査します。
- 経気管支肺生検(Trans-bronchial Lung Biopsy:TBLB)
- 肺末梢に存在する病巣は気管支鏡での直接観察が困難であるため、エックス線透視を用いて病巣に鉗子を誘導し生検を行います。
- 気管支エコー
- 気管支への癌の浸潤の深達度や周囲リンパ節の評価目的に施行します。
施行可能な治療法
- レーザー焼灼術
- 高出力ダイオードレーザーを用い、気管支内の腫瘍や肉芽を焼灼します。
- 気管分岐部腫瘍に対する高出力レーザー焼灼術 (手術不能例)
- アルゴンプラズマ焼灼
- Argon Plasma Coagulator (APC)を用いて、腫瘍や肉芽を焼灼します。レーザーに比べ焼灼能力は弱いですが、安全性に優れます。レーザーでは直線方向しか焼灼できませんが、APCでは側方の病変も焼灼可能です。
- マイクロ波凝固療法
- 気管支内の腫瘍をマイクロ波で凝固します。止血しながら凝固できる特徴があります。
- 高周波スネア(ポリペクトミー)
- 気管支内にできたポリープ状腫瘍を内視鏡的に切除します。
高周波スネアにて摘出した気管の過誤腫
- 硬性気管支鏡下治療
- 太い気管支の狭窄や閉塞を安全にまた一回の治療で開大することができます。気道ステント留置や異物摘出にも施行されます。
- ステント留置術
- 中枢気道に腫瘍による狭窄や閉塞ができた場合に、呼吸困難の改善を目的として気道ステントを留置します。自己拡張型金属ステント(SEMS)は軟性気管支鏡下に、デュモンステントなどのシリコンステントは硬性気管支鏡下に留置します。
・各種気道ステント - シリコン製ステント
- 金属製ステント (SEMS)
- シリコンと金属の混合ステント
- ・気道ステント留置術
- ステント留置前
- ステント留置後
- 気管支異物摘出
- 気管支内の異物を各種鉗子を用いて摘出します。軟性気管支鏡で摘出困難な異物は、硬性鏡を用いて摘出します。
硬性気管支鏡による異物摘出 (皿の破片)
- 光線力学的治療法(photodynamic therapy: PDT)
- 太い気管支にできた早期肺癌が適応となります。腫瘍選択的光感受性物質を投与後4時間目に低出力ダイオードレーザー(664nmの赤い光)を照射します。このレーザーは熱を発生しません。レーザーのエネルギーをもらった光感受性物質が光化学反応をおこし、活性酸素を発生します。この活性酸素が局所で腫瘍を破壊します。光感受性物質の唯一の副作用として皮膚日光過敏症が知られていますが、新しく開発されたレザフィリンは従来の光感受性物質に比較し非常に早く皮膚日光過敏性が消失します。
- PDTで治療した症例
PDT前
PDT後2ヶ月
症例は77歳男性。左B10a-bcの分岐部に粘膜の肥厚所見を認めた。
生検にて早期肺癌と診断した。治療後2ヶ月目の気管支鏡所見では分岐部は正常内視鏡所見を示し、生検でも癌の遺残はなく完全寛解が得られた。
治療・成績
診療実績(2022年度)
2022年度に内視鏡部で施行した総件数は、4,216例であった。内訳は上部消化管2,256例(経鼻内視鏡1,119 例)、下部消化管(コールドポリペクトミー:397、ポリペクトミー・EMR:165)1,479 例、内視鏡的逆行性胆道・膵管造影223 例、気管支鏡・TBLB 250例、内視鏡的粘膜下層切開剥離法(ESD)(胃・大腸)39例施行した。