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炎症性腸疾患(IBD)専門外来

潰瘍性大腸炎クローン病など炎症性腸疾患(IBD)は、腸に慢性的な炎症が起こる病気です。若い方にも多く発症し、症状の再燃と寛解を繰り返すため、長期にわたる治療や生活の工夫が必要です。
当院では、IBDに特化した専門外来を開設しました。患者さんやご家族が安心して生活を送れるよう、専門医による診療と多職種によるサポートを行います。

担当医


岩本 淳一
  • 日本炎症性腸疾患学会 IBD指導医・専門医
  • 消化器内科・内視鏡センター 教授

IBDに関する豊富な診療経験と研究実績を持つ専門医が、患者さん一人ひとりに合わせた最適な治療を提供いたします。

当外来の特徴

  • 専門医による診療:安心してご相談いただけます
  • 最新の治療法に対応:生物学的製剤やJAK阻害薬なども導入
  • 定期的な検査:病気の状態をしっかり把握し、合併症を予防
  • 生活サポート:栄養指導や生活の工夫もアドバイス

このような症状の方はご相談ください

  • 血便や下痢が続いている
  • 腹痛や体重減少がある
  • 他院でIBDと診断されており、継続的なフォローを希望される
  • 最新治療について詳しく知りたい
  • 妊娠・出産を考えており、治療との両立に不安がある

外来日程・予約

  • 担当医:岩本 淳一
  • 診療日:月曜日、木曜 午前・午後(完全可、予約外でも診察可能)
  • ご予約・お問い合わせ:029-887-1161(消化器内科外来受付)

 
IBD専門外来は、患者さんとご家族の安心のために全力でサポートいたします。

潰瘍性大腸炎(Ulcerative ColitisUC

疾患概念

潰瘍性大腸炎(UC)は、大腸の粘膜にびまん性の炎症が生じる原因不明の疾患です。直腸から始まり、連続的に大腸全体に広がることがあり、寛解期と再燃期を繰り返す慢性疾患です。免疫異常や腸内環境の乱れ、遺伝的要因が発症に関与すると考えられています。
病変の範囲によって全大腸炎型、左側大腸炎型、直腸炎型に分類されます。
 

症状

  • 血便(鮮血が混じることが特徴的)
  • 下痢(1日に何度もトイレに行く)
    (下痢・血便が数週間~数か月持続する場合には疑いがあります)
  • 便意切迫感(トイレが間に合わないような便意や腹痛)
  • 腹痛・発熱・倦怠感
  • 体重減少、食欲低下
  • 長期罹患では大腸がんのリスクが上昇

検査方法

  • 大腸内視鏡検査:炎症範囲や重症度の評価、組織検査
  • 血液検査:炎症の程度、ロイシンリッチα2グリコプロテイン (LRG)、貧血、栄養状態を確認
  • 便検査(カルプロテクチン):腸の炎症マーカー
  • CT/MRI:重症例や合併症の評価

薬物治療

薬剤区分
薬剤名の例 特徴
5-ASA製剤 メサラジン(ペンタサ®、アサコール®、リアルダ® 軽症~中等症の第一選択薬
ステロイド プレドニゾロン、ブデソニド経口(コレチメント®)、ブデソニド注腸(レクタブル® 急性期の炎症コントロール、寛解導入に使用
免疫調整薬 アザチオプリン(イムラン® 再燃予防やステロイド依存例に有効
GCAP(顆粒球除去療法) アダカラム® 炎症に関与する白血球を除去。副作用が少なく、ステロイド回避にも有効
生物学的製剤/分子標的薬 インフリキシマブ(レミケード®)、アダリムマブ(ヒュミラ®)、ゴリムマブ(シンポニー®)、ウステキヌマブ(ステラーラ®)、カロテグラスト(カログラ®), ベドリズマブ(エンタイビオ®)、リサンキズマブ(スキリージ®)、ミリキズマブ(オンボー®)、グセルクマブ(トレムフィア® 中等症~重症例に使用。IL-23抗体製剤や新規分子標的薬も選択可能
JAK阻害薬 トファシチニブ(ゼルヤンツ®)、ウパダシチニブ(リンヴォック®)、フィルゴチニブ(ジセレカ® 経口薬。潰瘍性大腸炎では3剤が使用可能

外科治療

  • 内科治療に反応しない難治例
  • 大量出血、中毒性巨大結腸症、穿孔などの緊急時
  • 長期罹患による大腸がん合併

標準術式は大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術で根治が期待できます。

クローン病(Crohn’s Disease

疾患概念

クローン病は、口から肛門まで消化管のあらゆる部位に炎症が起こり得る慢性疾患で、特に小腸と大腸に多く見られます。炎症が持続すると狭窄や瘻孔などの合併症を生じやすいのが特徴です。発症には免疫異常、腸内細菌、遺伝的要因などが関与しています。
病変の部位によって、大腸型、小腸型、小腸大腸型に分類されます。
 

症状

  • 腹痛・慢性的な下痢
  • 体重減少、栄養障害
  • 発熱・倦怠感
  • 肛門病変(痔瘻、膿瘍)
  • 吸収障害による貧血や低栄養

検査方法

  • 大腸内視鏡:回腸末端の観察、縦走潰瘍や敷石像を確認
  • 小腸カプセル内視鏡/ダブルバルーン内視鏡:小腸病変の詳細評価
  • 血液・便検査:炎症マーカー、ロイシンリッチα2グリコプロテイン (LRG)、貧血、栄養状態
  • 画像検査(CTE/MRE:小腸の炎症や合併症の評価

 

薬物治療

薬剤区分
薬剤名の例 特徴
5-ASA製剤 メサラジン(ペンタサ® 軽症例で使用。効果は限定的
ステロイド プレドニゾロン、ブデソニド経口(ゼンタコート® 急性増悪期に短期使用
免疫調整薬 アザチオプリン(イムラン® 再燃予防、ステロイド離脱に有効
GCAP(顆粒球除去療法) アダカラム® 難治例に選択肢となる治療法
生物学的製剤/分子標的薬 インフリキシマブ(レミケード®)、アダリムマブ(ヒュミラ®)、ウステキヌマブ(ステラーラ®)、ベドリズマブ(エンタイビオ®)、リサンキズマブ(スキリージ®)、ミリキズマブ(オンボー®)、グセルクマブ(トレムフィア® 中等症~重症例に使用。IL-23抗体製剤や新規分子標的薬も適応あり
JAK阻害薬 ウパダシチニブ(リンヴォック® クローン病に保険適応のある唯一のJAK阻害薬
栄養療法 成分栄養剤、経腸栄養 特に若年例や活動期の栄養管理に有効

外科治療

クローン病は外科手術で根治する疾患ではありませんが、合併症に対して手術が必要となります。

  • 腸閉塞を起こす強い狭窄
  • 瘻孔や膿瘍が改善しない場合
  • 大量出血、穿孔などの緊急時

術式は腸管切除、狭窄形成術、瘻孔閉鎖術などで、腸をできるだけ温存する方針がとられます。