泌尿器科
特色
前立腺癌に対する密封小線源治療と前立腺肥大症に対するグリーンレーザーによるPVP療法を茨城県で唯一実施している施設です。
泌尿器科の主な悪性疾患
前立腺癌
米国では男性のガン死因の第2位を占める頻度の多い癌で日本でも増加しています。健康診断で血液検査の前立腺特異抗原(PSA)を検査するようになり、早期前立腺癌の発見率が飛躍的に上昇しました。確定診断は組織検査により行われ、当院では1泊2日の入院で行っております。前立腺癌は一般的に他の癌よりも進行がゆっくりであり、前立腺に限局した早期癌が見つかった場合、転移が出現するのは平均5から10年後、命に関わるのは10から15年後と言われ、かなり先の健康状態やライフスタイルを見越した治療選択がなされます。また悪性度が低く、癌がごく僅かの場合治療をせずにPSAなどの検査を時々行うのみで様子をみる(active surveillance)場合もあります。当院の前立腺生検は年間約150件です。
早期前立腺に対して積極的に密封小線源治療を行っています。低リスクの方には小線源治療単独(二泊三日)での治療、そうでない方にはトリモダリティ治療(ホルモン治療・小線源治療・VMATによる外照射)をすすめています。毎週一人のペースで年50人ほど治療しています。小線源治療が何らかの理由で出来ない場合はVMAT単独による治療(年50人ほど)も行っています。
進行前立腺癌に対する治療は、ホルモン治療・化学療法・放射線治療(外照射・内用療法)など集学的に行っています。
高齢の方が多い地域なので、一人一人に合わせて検査から治療までのスケジュールなど調整して実施しています。
膀胱癌
痛みを伴わない肉眼的血尿があった場合、膀胱癌の疑いがあります。膀胱癌は尿路上皮(移行上皮)由来の癌が多く、時に扁平上皮や腺上皮由来の場合があります。発癌のリスクはベンジンなどの有機物質による職業性のものもありますが、最も一般的なリスクは喫煙と言われています。
膀胱癌は早期であれば内視鏡手術のみで完治できますが、組織の悪性度、進行の度合いで膀胱全体を摘出する場合があります。
膀胱を摘出する手術を行う場合、前立腺や尿道に浸潤がなければ腹部に尿を出すストマを設けず、いままで通り尿道から排尿できる自然排尿型の人工膀胱造設術を行っています。膀胱全摘を行った場合や、進行癌の場合には抗がん剤による化学療法を入院により行います。当院の膀胱癌内視鏡手術は年間約70-90例で膀胱全摘手術は10-15例です。
腎癌
腎臓にできる充実性(水の貯まった嚢胞性でないもの)腫瘍の90%は悪性腫瘍である腎細胞癌と言われています。腎癌の25%は発見された時から転移のある進行性腎癌であり、転移のない場合も20~30%に将来転移が出現すると言われています。腎癌は放射線や抗がん剤が効きにくいことから早期発見による手術的治療が原則であると言われています。腎癌も組織型によってガンとしての悪性度が様々であると言われています。最も頻度が多いのは淡明細胞型ですが、乳頭状腺癌、嫌色素細胞型と呼ばれるものはやや悪性度が低く、一方髄質由来のもの、肉腫様の部分を含む腫瘍は悪性度が高いと言われています。
早期癌は腎部分切除或いは腹腔鏡を用いた低侵襲手術を行っております。当院の腎癌手術の件数は年間20例ほどです。転移がある場合でも転移が一つであれば原発巣と転移巣を共に切除する場合があります。また分子標的剤を用いた治療や免疫チェックポイント阻害剤等の薬剤を用いた免疫治療も積極的に行っています。
腎盂・尿管癌
腎で作られた尿が集められる部位(腎盂)、膀胱に運ぶ管(尿管)にできる癌が腎盂・尿管癌です。多くの場合その組織構成から尿路上皮癌ですが、扁平上皮癌や腺癌ができることもあります。癌の悪性度は膀胱癌と同様ですが、内視鏡手術が困難であること、組織の壁が膀胱よりも薄く、臓器外へ浸潤・転移しやすいことから適切な外科的治療が必要になります。
基本は腫瘍がある側の腎・尿管そして膀胱への出口である尿管口周囲を合併切除する手術です。当院では従来の皮膚切開による手術を行っておりますが、体型や腫瘍の部位により腹腔鏡による腎摘出も行います。当院での治療数は年間15-20例です。手術後は場合により放射線治療や抗がん剤の化学療法を追加します。
泌尿器科の主な良性疾患
前立腺肥大症
男性なら誰しも経験するであろう排尿障害。その原因の一つが前立腺肥大症です。前立腺肥大症に対する根治的治療は手術になります。薬物療法が有効であっても一生涯内服しないといけないという心理的束縛と経済的束縛を抱えることになります。従来の手術方法は出血・失禁の問題なども抱えていましたが、当院では最新のグリーンレーザーによる前立腺蒸散術(PVP)を開始しています。月に10-15人ほどのペースで行っています。現在茨城県で唯一の実施可能施設です。
尿管結石・結石性腎盂腎炎
尿管結石は若年~中年の方に多いのが特徴で、レーザーによる内視鏡的破砕術を中心に年100人前後行っています。当院周辺は高齢者が多いため、都会と異なり高齢者の結石性腎盂腎炎が多いことも特徴です。意識を失った状態で搬送され、ICUでの集中治療のあと結石治療へと連携して治療しています。
最先端治療を提供することはもとより、高齢化社会のど真ん中の医療提供となっていますので、患者さんおよびご家族が安心できる医療を提供していくよう努めています。
チーム医療
泌尿器科単独で行動するよりもチームで行動する方がよいと考えられる案件では、他科多職種とのチームを組んで活動しています
排尿ケアチーム

当院の排尿ケアチームは2024年7月より活動を開始しました。
医師・看護師・理学療法士が専門的知識を用いて、尿道カテーテルの早期抜去と尿路感染症を防止するとともに、その人に合った排尿自立の支援、QOL(生活の質)の向上を目的としています。 チームの対象となる患者さんは、尿道カテーテル留置中の患者さんや尿道カテーテル抜去後に排尿障害のある方です。主治医・病棟看護師が、排尿問題が生じている患者さんがいた場合に、排尿機能を評価した上で、排尿ケアチームが介入し、週1回のカンファレンスとラウンドを行っています。
まだまだ発展途上のチームですが、院内の排尿ケアの質的向上に向けて、少しずつ活動の場を拡大中です。排尿トラブルでお困りの場合は、お気軽にご相談ください。
密封小線源チーム

当院では早期前立腺癌に対して積極的に密封小線源治療を行っています。その治療成績は手術に比較しても全く遜色のないものです。より低侵襲でかつより良い治療成績を導くためにはチーム力が必須です。泌尿器科医・放射線治療医・医学物理士・診療放射線技師・泌尿器科看護師・放射線科看護師さらに病棟看護師が一体となって動いています。2025年6月に当院での治療件数が200件を超えてきました。この先、300件,500件さらには1000件に向けて、より良い治療と安心感を提供できるよう努めていきます。
スタッフ紹介

科長・准教授 黒田 功
資格:
- 日本泌尿器科学会 専門医・指導医
- 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医・指導責任者
- 身体障害者福祉法第15条指定医師
所属学会:
- 日本泌尿器科学会
- ヨーロッパ泌尿器科学会
- 日本癌治療学会
- 日本臨床腫瘍学会
- 日本核医学会 など
経歴:
- 1991年3月 慶應義塾大学経済学部卒業
- 1991年4月 香川医科大学医学部入学
- 1997年4月 香川医科大学泌尿器科入局ならびに香川医科大学大学院入学
- 2001年3月 香川医科大学大学院修了 医学博士修得
- 2001年4月 香川医科大学泌尿器科学助手
- 2002年4月 埼玉医科大学病院泌尿器科助手
- 2007年4月 埼玉医科大学国際医療センター包括的がんセンター泌尿器腫瘍科講師
- 2011年4-5月HenriMondorHosp(Creteille,France)留学
- 2012年6月 東京医科大学茨城医療センター泌尿器科講師
- 2015年7月 東京医科大学茨城医療センター泌尿器科准教授
ひとこと:
茨城県や東京医科大学に縁も所縁もなく赴任してはや13年経過しました。東京医科大学茨城医療センターへ来てよかった,阿見でよかったと思ってもらえるよう、努力しています。前立腺癌に対する密封小線源療法や前立腺肥大症に対するPVP療法など、県内でOnly One, or No.1を常に目指し、泌尿器科チーム一丸でこれからも頑張っていきます。

助教 内田 将央
資格:
- 日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医
- 泌尿器腹腔鏡技術認定医
- 日本生殖医学会 生殖医療専門医
- 身体障害者福祉法第15条指定医師
所属学会:
- 日本泌尿器科学会
- 日本生殖医学会
学歴:
- 筑波大学卒業
職歴:
- 筑波大学附属病院、国保旭中央病院、日立総合病院、国際医療福祉大学病院、筑波学園病院
ひとこと:
患者様・ご家族様の立場で考え、よりよい医療を提供できるよう努めます

助教 足立 高弘
資格:
- 日本専門医機構認定泌尿器科専門医
- 日本医師会認定産業医
- Da vinci certificate (術者)
- 身体障害者福祉法第15条指定医師
経歴:
- 平成29年3月 北里大学医学部卒業
- 平成29年4月 練馬総合病院 初期研修医
- 平成31年4月 東京医科大学病泌尿器科 入局
- 令和2年4月 東京医科大学病院 ICU コロナチームスタッフ
- 令和2年7月 東京医科大学 泌尿器科 助教
- 令和3年6月 医療法人社団博栄会赤羽中央総合病院 泌尿器科
- 令和4年6月 東京医科大学 泌尿器科 助教
- 令和6年6月 東京医科大学茨城医療センター 助教
ひとこと:
患者様に一人一人に寄り添った医療の提供を常に心がけます。
また、安心、安全な医療をご提供できるように日々精進して参ります。

臨床助教 會田 和司
所属学会:
- 日本泌尿器科学会
経歴
- 2021年3月 東京医科大学卒業
- 2021年4月 東京医科大学茨城医療センター初期研修医
- 2023年4月 東京医科大学病院泌尿器科専攻医
- 2024年3月 東京医科大学茨城医療センター専攻医
ひとこと:
入院患者さんの診療を主に担当しています。ご不明な点があれば何でもご相談下さい
専攻医 亀山 貴央
所属学会:
- 日本泌尿器科学会
経歴
- 2022年3月 東京医科大学卒業
- 2022年4月 東京医科大学茨城医療センター初期研修医
- 2024年4月 東京医科大学病院泌尿器科専攻医
- 2025年4月 東京医科大学茨城医療センター専攻医
ひとこと:
入院患者様の病棟管理を主にいたします。至らぬ点も多々ございますが、何卒よろしくお願いします。

客員教授 青柳 貞一郎
資格:
- 日本泌尿器学会専門医・指導医
- 日本透析医学会専門医・指導医
所属学会:
- 日本泌尿器科学会
- 日本透析医学会

非常勤医師 鴨田 直博
専門:泌尿器科一般
所属学会:
- 日本泌尿器科学会
資格:
- 日本泌尿器科学会専門医
- 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
外来診療
*表は右にスクロールして見れます
外来担当医 | |||||
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
黒田 功准教授 内田将央助教 |
交代制 | 黒田 功准教授 足立高弘助教 |
内田将央助教 鴨田直博医員 (第1.3) |
交代制 | 交代制 |
専門外来(午後)
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
黒田 功准教授 (前立腺癌密封小線源外来) |
「泌尿器科」の休診・代診 | |||||
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
1 | 2 | 3 | |||
泌尿器科 鴨田 直博 |
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5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
治療・成績
診療実績(2023年度)
1.外来患者数
- 初診外来患者数 831名
- 再診患者数 9,183名
- 延患者数 10,014名
2.入院患者数
- 新入院患者数 661名
- 実患者数 814名
- 取扱患者 5,361名
- 平均在院日数 7.0日
手術件数(2024年分)
悪性疾患 | 2023年 | 2024年 |
腎(尿管)悪性腫瘍手術 | 19 | 19 |
うち体腔鏡下手術 | 10 | |
膀胱悪性腫瘍手術(全摘) | 12 | 13 |
膀胱悪性腫瘍手術(経尿道的手術) | 83 | 89 |
前立腺癌に対する密封小線源治療 | 44 | 50 |
精巣悪性腫瘍手術 | 3 | 2 |
陰茎悪性腫瘍手術 | 1 | |
後腹膜脂肪肉腫摘出 | 1 | |
体幹部軟部悪性腫瘍摘出 | 1 | |
良性疾患 | 2023年 | 2024年 |
副腎腫瘍摘出術(皮質腫瘍) | 1 | |
癒合腎離断術 | 1 | |
腎瘻増設術 | 12 | 14 |
経尿道的尿路結石除去術(TUL) | 53 | 55 |
経尿道的尿管狭窄拡張術 | 6 | 5 |
経尿道的尿管ステント留置術 | 124 | 102 |
尿管尿管吻合術 | 2 | 1 |
尿管膀胱吻合術 | 1 | |
尿管皮膚瘻造設術 | 1 | 1 |
膀胱内凝血除去術 | 1 | 1 |
膀胱結石摘出術 | 7 | 10 |
経尿道的電気凝固術 | 5 | 5 |
ハンナ型間質性膀胱炎手術 | 3 | 1 |
膀胱瘻造設術 | 7 | 3 |
経尿道的前立腺手術(TURP) | 11 | 12 |
経尿道的レーザー前立腺蒸散術(PVP) | 126 | 86 |
尿道狭窄拡張術 | 3 | |
尿道異物摘出術(後部尿道) | 1 | |
外尿道腫瘍切除術 | 3 | |
包茎手術 | 7 | 9 |
精巣摘出術 | 19 | |
精巣上体摘出術 | 1 | |
陰嚢水腫手術 | 17 | 13 |
その他 | 63 |